3. きのう行ったところ〜その1(by sasara♀)
2004年5月のある昼下がり、モーレツな眠気に襲われた。
ソファに寝ころぶと一気に意識が遠のいて……爆睡……目が覚めた時は、自分が誰で、どこにいるのかしばらく思い出せなかった。聞けば、Sasara♂も同じ時間帯に高速道路を移動中、尋常でない睡魔に襲われ、やむなくパーキングエリアで仮眠をとったと言う。
翌日、Sasara♂&♀は、昼食のラーメンをすすりながら、次回作の録音計画について話し合っていた。
2003年のクリスマスにリリースした"Candlelight Whispers"は、その前1年間にできた5曲で構成されるsasara.comのファースト・アルバムだが、処女作ではない。
Sasara♀が突如「作詞」に目覚めたのは2001年夏のことだった。その経緯は後に譲るが、翌年のGWにデビューコンサートを開くまで、月1作のペースで次々に新曲が「生まれた」---「作った」というより、尿意や陣痛をもよおして排泄するが如く「産んだ」という表現が近い。
2004年は、それら11曲を網羅した「デビューアルバム」を録音する予定だったが、なぜかイマイチのれないでいた。
♂「今回のアルバムがしんどいのは、『後追い』だからなんだよな。
"Candlelight"は、曲が生まれた直後のリリースだったから、その時の情感をそのまま録音できたけど、今度のは、当時の気持ちを振り返らにゃ〜いかん。」
♀「だよねぇ〜、『今どうしてもこれを言いたい!』みたいな気持ちから離れてきちゃって……私らの歌は、勢いとか生の喜怒哀楽とかないと、まったく意味ないし…」
♂「自分らの‘今’というか‘旬’というかを捉えた新曲でもできれば、また違ってくるとは思うがね。」
♀「‘今が旬’ねぇ……何かノリが足らないなぁ。この頃やたら眠くてかったるいし……昨日だって、明らかに『どこかにワープした』『ある場所に連れて行かれた』(しかも二人同時に)って感じで、その感じだけは、とってもリアルにキョーレツにあるのに、どこに行ったのやら、何のこっちゃやら…」
♂「だいたい、俺らのトコに来る衆[注3]は、具体性に欠けるよな。言いたいことがあるなら、もっと分かり易く説明してくれたっていいだろうに。」
♀「まったくね。‘今’を捉えろって言ったって、うたた寝してた間の記憶は全く空白なんだから、これじゃあ……むむむ、待てよ……もしかしたら『きのう行ったところ』に‘今の歌’があるのかも……あっ、そうか、ううっ、でる、でそう……」
かくして生まれたのが、"Where I was yesterday afternoon"なのでありました。
注3:「衆」とは、「もろもろ」「もろびと」等の意味で常用される遠州弁です。この場合は…何て言ったらいいんでしょう…各生命体にはそれぞれ固有の周波数があるとか言いますが、時々自分のものとは違う波長を身辺に感じることってありませんか?